アクロイド殺し

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

読者が一人称の語り手に感情移入して読まないとプロットが活きない作品だと思うのですが、そうした場合でも、犯行の手口の謎解きと犯人の意外性というところだけに読者の関心がとどまればいいですが、動機の納得性というところまで深く考えられてしまうと、それが読者自身のことになるうえに、語り手の人格描写に必然的に厚みが出せない構造なので、結局、最初のアイデアが成功しているのか、失敗しているのかよくわからなくなってきます。なので、とりあえず、わたしとしては「オリエント急行殺人事件」のほうが好きだというくらいにしておきます。